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「 by now 」

2022.3.16
OUT NOW！！

¥3000(税込)
品番 : bwr-004



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1. ignition point
2. silent escalation
3. 水鏡-water mirror-
4. 冬の汽笛 -winter whistle-
5. old tears
6. back of eyelids
7. i didn’t know
8. not my monkey , not my circus
9. far side
10. by now


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「 冬の汽笛 - winter whistle - 」

制作：M.L studio



6/1水曜日

こんにちは。無職のイレイです。収入アップ転職を目指し仕事辞めてみました。今日から有給消化。前の会社のみなさんありがとうございました。お世話になりました。

朝、目覚めから早速自由な時間が怖くてたまらなかったです。根が怠け者x楽観主義者なので油断すると取り返し付かないぐらいダラダラしてしまう。だから前もって書類選考に応募しまくり、採用面接を幾つか決めていました。今日はその初日。アラフォーだからフレッシュな新卒と同じように挑んでも勝ち目は薄い。だからってデキますぶってもウザがられそう。っていうかデキないのがすぐバレそう。

当たり障りなく見せて、お！？キミ分かってるねと面接官のツボを突くような作戦でいくんだ！



浅はかですまんな



一社目。
ここは第三、四希望ぐらいの会社。すなわちスベリスベリ止めぐらい。

面接開始10分。
詳しく話を聞いてみると、ちょっと条件が思ってたのと違う。うーむ。限りなく無しに近付いた。

面接官
「イレイさん。もうこの場で内定出します。」

な！！？？早っ！！バイトじゃないんだから。

一気に不安という永久凍土が溶け始め心が揺らいだがおれは即答を避けた。面接官は1週間待つと言ってくれた。優しい。だが正直ここに入社となると、目指す経済状況とは少し開きが出る。その上働く時間はかなり増える。バンド活動はおろか、家族との時間はもう殆ど無くなる。でも早く職を得て自分も家族も安心したい。

や、やっぱ入社させて下さい！

と、玄関まで見送ってくれる面接官に言ってしまえばこの不安は今すぐ消えてなくなるというのに。と葛藤しながら外に出た。これで良かったのだろうか。この後一社も受からなかったらどうしよう。期限過ぎてから、やっぱ入社希望ですと頭を下げたら雇ってくれるだろうか。







6/2木曜日

面接二社目。
本命のうちの一つ。人はたくさんいるのに静かで、キーボードを叩く音と全員アナウンサーですかぐらいイントネーションが綺麗でスマートな電話対応の声がたまにしか聞こえないオフィスに通される。



10分ほど席で待つ。放置。時間ジャストで来たはずなのに、誰も何も言ってこない。もしもーし、みんなおれ見えてますか。またコザ差別ですか。那覇そんなに偉いんですか。

すると、さっきからチラッともこっちを見なかったおれのすぐ真正面にいる偉いであろう人が立ち上がり、そのままこっちに来て顔色一つ変えずすぐさま面接が開始された！何だこの奇襲は！お待たせしましたとかの挨拶もない！今！おれは！完全に！試されている！ビビるな！

しかし冒頭からペースを握られてしまい、終始受け身の受け答えで面接は進んだ。終盤、「何か質問はありますか？」の問いかけ。ここや。巻き返しはここしかない。だが良い質問が浮かばない。用意していた質問は全て一方的に先に説明されてしまった。どうする。質問。質問。質問。パンはパンでも食べられないパンて何ですか？いかん余計な事を考えるな。



ていうかもし受かったらおれはこの人の下で働くのか。この人さっきから履歴書ばっか見やがって。ちょっと目見ろや！好きなバンド当ててやっからよ！ってまた！余計な事考えるな！



何も質問が浮かばないまま微妙な間が流れる。かつて就活中だった仲本さんの名言がよぎる。

「今のところ、ありません。」

今のところて。今しかないんですけど。しかし同じ立場になってみて、これ以外言葉は見つからない。ようやくひねり出した質問が

「どんな服装で業務に当たりますか？」

だった。

「ご覧のような格好です。」

と、オフィスを見渡すよう促された。見れば分かる。おれは不採用を確信した。







6/3金曜日

面接三社目。

給料的には申し分ない。しかし仕事の内容はスケジュール的にも実務的にもハード。音楽をバリバリやる為の気力体力は確保出来るのだろうか。気合いだけでは無理だというのが既に分かる。しかし国内業界最大手という安定感。決まれば自分と家族の経済的な未来がどう転んでも最低限は絶対的に保証される。



面接は意外と和やかに進んだ。ていうか、ぜひその経験を活かし外からの目で改めて仕事の流れを見て業務改善に当たり、若い従業員の意識を高めてほしいとまで言われた。つまり採用って事ですか？ちょっと心に火がつく。

面接官
「イレイさん、来週●曜日●時に二次面接に来れる？ここでリモートでやります。」

おう？二次があるのか。そりゃそうだよな本土のデカい会社なんだから。役員面接とかかな。

イレイ
「はい。ありがとうございます！」


一次面接合格。



良かっ...



たよな。うん、普通に考えりゃまずまずじゃないか。今この瞬間から二次面接対策に取り組むべく集中せねば。


しかし。


何だろうこの迷いは。自分の中の大切にしたいこと一位が90年代のB'zとミスチルとGLAYと宇多田ヒカルと浜崎あゆみが同じ日にシングル発売ぐらい、分からなくなる。


夕方。前日の会社から丁寧に不採用の連絡が入る。もう忘れてましたぐらい落ちた気になってたので1ミリもがっかりしなかった。

立て続けにまた着信。先ほど一次受かった面接官から。何事か。

二次面接に向けてのアドバイスをわざわざ伝えてくれた。これまでの傾向からいくと、こんな質問が予想されるので事前に対策を立ててくれと。ぜひ受かってくれと。

期待してくれてるのが伝わってきて嬉しくなる分、迷いも大きくなった。何を迷う事があるのかおれは。



何って。



音楽以外ない。



いやいや、どんなに忙しくても仕事しながらバンドやってる人はたくさんいる。出来るか出来ないかではない。やりたいかどうか。ただ、若い頃と違い自分自身の事が多少分かってきた。おれはそんなに器用な人間ではない。要領は悪い方で、難儀したりわざわざ失敗しないと分からないのかというぐらい物覚えも悪い。

多分この会社で仕事中心の生活になるとバンドは急激に失速する。って、コロナ以降もうペースは落ちてるんだし、それは別にもう気にする程でもないのかな。

でもなあ。人生で音楽以上に心を上向きにさせてくれるものは他にない。それはもう分かっている。いや、それは思い込みかもしれない。もっと視野を広げてどうのこうの...



疲れました。一回寝ます。








6/4土曜日

...おれ遊んでる場合では無いはずなんだが。

と頭の片隅では緊張感を保ちながら我が子との時間を優先。雨続きで外で遊べない日々が続いていたので、屋内でも体を動かせる遊び場を夫婦で探していたら、鍾乳洞に辿り着く(どんな夫婦よ)。

沖縄で一番有名なのは南城市の玉泉洞ですが、多分観光客で一杯だろうと予想し、うるま市石川の鍾乳洞へ。玉泉洞に比べマイナーなので甘く見てましたが、ガッツリ洞窟探検出来ました。






洞窟脱出後、またもや嫁さんの野生のカフェ感知能力によりジブリみたいなカフェ発見。



綺麗なカフェ恒例の我が子脱糞。





6/5日曜日

翌日からまた就活再開や。なんでこのご時世に履歴書は手書きなんだろうか面倒くさい。と、ぶつくさ言いながら深夜に一人で書き書きしながら息抜きにFacebook見てみたら、あの元ZOZOTOWN社長の前澤さんがクイズを出しており、正解者には先着で100万円プレゼントという企画をやっていた。

今のおれにすれば、99万8500円より絶対に100万円が欲しいぐらいの状況。無職だからね。何か知り合いもチラホラ参加しているようです。分かりやすいクイズで、大多数が同じ回答をしていました。待てよと。これはレッドオーシャンだと。でもまあ。まさかなーと思いながら少数派の回答で僕もチャレンジ。しばらくスマホ放置。

就寝直前。アラームセットしようとしたら。

ん？メッセンジャーに連絡来てる誰からだ？


「前澤です。あなたの答えは正解です。」






！！！




マジかよおい！寿司だ！寿司の特上と串盛りの松をとれ！車検ももう言われるがまま全部直せ！



って、待ちなはれ。そんな訳ない。メッセージをよく見ると、ここから手続きしなはれ的な案内と、あなたのカード情報を全部バラしてねという枠が。

ググると王道の詐欺でした。

3秒ぐらい夢見れました。怒りはおろか、それはそれでありがとう。一瞬幸せでした。






6/6月曜日

四社目。
ズバ抜けて好条件なわけではないが、平均して抜け目はない。自分が求める環境や給与額はクリアしている。不満は無い。

この日は面接ではなく会社訪問。ある求人サイトに登録し、社長さんと直接メッセージのやりとりが出来てしまったのです。設立2年目の新しい会社。高齢化が加速する社会でこれからニーズが高まるしかない業態。

あれこれメッセージでやりとりするよりは、気軽に会社見学に来てみて下さいとお声がけを頂いたのです。

なるほど。これで本当に気軽にジーパンポロシャツで行く奴は馬鹿だと。事前に色んな事をシミュレーションして訪問にのぞんだ。いきなり社長室に通される。マンツーマンで話が始まった。こちらをリラックスさせようと、フランクな雰囲気で話してくれましたが内容は面接そのもの。やはりな。こうなるのは分かっていた。

イレイ
「見学という事ではありますが、履歴書もお持ちしましたのでご覧になって頂けますか？」

社長
「おお！助かるよ！」

会社が求める人材とおれの経歴がハマっているのがお互い分かり話が弾む。自分の中から聞きたい事ややってみたい事が溢れて来る。

社長
「よし。イレイさん、いつから来れますか？」

イレイ
「●日から出社可能です。」

社長
「今週中に内定通知書を送ります。他にも受けてる会社、受ける予定の会社はありますか？」

イレイ
「ありますが、この場で全てお断りしても構いません。」

社長
「そこまでしないで良いですよ笑。通知書をしっかり確認してご家族とも相談して下さい。」


帰宅。嫁さんに話したら、昨日までと目が違うと言われました。確かに気付けば迷いは消えてしまっていた。やりたいようにやってちょうだいという有り難きお言葉。

良かった。食いっぱぐれなくて済む泣。

この会社なら生活もバンドもちゃんとペース保って安心してやっていける。不祥事起こして内定取消しならないように気を付けて生きます。



夕方。後日二次面接を受ける予定の会社に辞退の報告。非常に残念がられ、少し胸が痛んだ。内定済みの一社目にも断りの連絡を入れた。ハイワカリマシター！とビザの出前ぐらいのリアクションだった。

緊張の糸が切れ、思考がやっとプライベートモードに。めちゃくちゃになっていたSpotifyの再生リストをジャンルごとに綺麗に整理する作業をビール飲みながら深夜まで行いました。久々に何も考えず没頭出来た。





6/7火曜日

本来なら超大本命の会社の入社試験日。条件、給与、共に最高。当たり前ですがその分倍率も高く激戦。日本屈指の飲料メーカー営業職。正直に言うと勝ち抜く自信は無かった。やるしかねえという空回りの気合いでエントリーしたようなもん。

という高い壁に更にこっからギア上げてトライする気力は残されておらず、辞退しました。それよりはせっかく採用してくれた会社の入社準備に気持ちが向いていた。




6/8水曜日

そう言えばもう一社、最強条件の求人がありウェブからエントリーした企業があったんだった。だが、お前よくその経歴で来たなと面接で言われそうなぐらい、いや面接まで行けたら上出来だというぐらいの異業種。書類選考でまず落とされるだろうと。ハローワークに紹介状をもらいに行った時も、既に数十人が申し込んでおり、未経験応募可とは言え挑むにはハードル高いですよと言われました。それは百も承知の上でやるだけやってみようと履歴書や職務経歴書を気合い入れて書くつもりでした。

自宅のマイクローゼットを開けた時、棚にまとめて保管していた履歴書、職務経歴書、求人誌、顔写真、ハローワーク資料が目に入った。全部まとめてドーン！と捨てた。スマホに記録していた目ぼしい求人情報も全て消去。

数ヶ月かけて転職に向け動いてきたけど、もう終わったんや。無事乗り切ったで。




っっっっふぃぃぃぃぃー。と改めて安堵のため息が出た。




6/9木曜日

自宅駐車場にて。

嫁さん
「あ、虹！違っ！なんだメガネのふちか。」

という独り言がジワジワ来て、階段登れなくなるぐらい笑ってしまった。何やこいつ笑。


笑えるって良いですね。



って、そろそろ切り替えていかんと。新たな戦いがもうすぐ始まる。新生活のペースを早くつかんで心身共に整えて、バンドもエンジン温め直そう。



何より健康に気を付けよう。




日々は山を乗り越えてほっとした。